勘違いしている人が非常に多いのですが、
「ストレスが悪い」という古い常識は間違いです。
「ストレス対策を適切にしないから害を及ぼす」というのが真実です。
①ストレスとは何か?
②ストレステスト〜あなたはどっちのタイプ?
③ストレスを避けると何が起こるのか?
④ストレスはあなたの大切なものを教えてくれる
⑤「PTSD」から「PTSG」へのシフト
実は、ストレスを避ければ避けるほど、より問題が大きくなって、後で自分自身に振りかかってきます。
これは、本当に気を付けなくてはいけません。
ストレスは避けるのではなく、ましてやテキトーに解消するのでもなく、適切に対処(解消ではない)する必要があります。
「できるだけストレスを避けましょう」
「ストレス解消しましょう」
「気分よく過ごすことが大事です」
そういったことを、自己啓発系やスピリチュアル系の人が無知で言っているのなら、まだ分かります。
私も心のことを学ぶまではそう思っていたことがありますし…
でも、それを医療関係の方や心理カウンセラーを名乗っている方が言っているのは、かなり質が悪い。
もしかしたら、そうすることでお客様を依存させているのでは? と疑ってしまいます。
それを入り口としてしっかりとストレス対策ができるようにお客様を導くのなら良いのですが…
ちなみに、私は「ストレス解消が不要だ」と言っているわけではありません。
一時的なストレス解消であっても、それによって、ストレスにしっかり向き合う活力が湧いてきます。
だから、緊急避難的にストレス解消したりストレスから逃れることは必要です。
でも、「ストレス解消だけ」では不十分だということです。
また、優しい言葉にも注意しましょう。
「あなたは今のままでいいんですよ」
「逃げてもいいんですよ」
「無理をしなくてもいいんですよ」
もちろん、心が疲弊しきっている人たちにとっては、ストレスを避けることも必要だし、自己肯定感を高めることが効果的な局面があるかもしれませんし、一時的に気分が良くなることも大事です。
でも、やみくもに自己肯定しても、すぐに元に戻ってしまいませんか?
そのままの自分を肯定してストレスから逃げてばかりだと、心が成長しないし、ストレスに対処するスキルが身に付きません。
おまけに問題を放置するから、人生の質がどんどん低くなっていきます。
つまり、現実逃避です。
お酒やドラッグやギャンブルやゲームに逃げ込んでいるのと変わりません。
一時的に気分が良くなるだけで、すぐに元に戻って、また気分が良くなることを求め続ける。
依存症のようになっていることを自覚しましょう。
おそらく、ストレスを避け続けてきた方はここまで読んでくださっていないでしょう。
もし、読んでくださっていたとしたらかなりストレスを感じているはずです。
不愉快ですよね?
申し訳ありません。
後述するとおり、そういったストレスをなぜ感じているのか、ということを理解することで、人生の質が高まります。
なので、人生を根本的に変えたいとお考えの方は、少々我慢してこの先も読んでいただけると幸いです。
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①ストレスとは何か?
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私たちはストレスという言葉をなんとなく使ってます。
「ストレスがかかる」
「ストレスが原因」
みたいに。
いったい、ストレスって何でしょう?
ストレスとは
「外部からの刺激によって体の内部に生じる反応のこと」
です。
その反応を「ストレス反応」といいます。
外部からの刺激のことを「ストレッサー」といいますが、このことを「ストレス」と表現することもありますよね。
「上司がストレスだ」みたいに。
「上司がストレッサーになってストレス反応が生じている」
とは、あまり言いません。
なので、この投稿ではその辺の厳密さを少し犠牲にしつつ分かりやすい表現で書いてまいりますことをご了承ください。
ストレス反応には色々ありますが、問題となるのは「闘争・逃走反応」です。
これは非常に原始的なもので、すべての脊椎動物だけでなく、無脊椎動物も含めた多くの動物に共通してみられるものです。
脅威に対して、全力で戦うか(闘争)、全力で逃げるか(逃走)という、生き残るためのとても大切な反応です。
私たち人間の心が進化した原始の環境ではこの闘争・逃走反応が効果的に働いていました。
・遠くに見える人影(敵の部族かも)
・やぶの中でカサカサ音がする(猛獣かも)
・暗闇の動物の唸り声や光る眼(猛獣かも)
・猛獣と出会った時(逃げなきゃ!)
・マンモスを狩るとき(殺すか殺されるか!)
そういった脅威は一時的だし、それが去ったことが明確に分かります。
そして、しばらくはストレスのない群れの中での仲間との時間が長く続きます。
つまり、強烈なストレスを感じる一方、ストレスゼロの時間も長いということです。
一方、現代社会においてはミスマッチが生じています。
・常に知らない人とすれ違う
・知らない人と密着する満員電車
・上下のある人間関係
・ネガティブなニュース
・明るすぎる夜
・うるさすぎる街
警報機が常にビンビンに働いていて心が疲弊してしまいます。
だから、ある程度ストレスを避けるのは必要なことです。
ストレス解消も大事です。
しかし、ストレスを避けてばかりでは人生の質は低くなるばかり。
なぜでしょう?
その理由については、後で詳しく書きます。
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②ストレステスト~あなたはどっちのタイプ?
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以下の質問に「はい」か「いいえ」で答えてみてください。
・ストレスがあると、健康や活力が損なわれる
・ストレスがあると、パフォーマンスや生産性が低下する
・ストレスがあると、学習や成長が妨げられる
・ストレスは悪影響をもたらすため、できるだけ避けるべきだ
「はい」はいくつありましたか?
次の質問はいかがでしょう?
・ストレスがあった方が、パフォーマンスや生産性が向上する
・ストレスがあった方が、健康や活力の向上に役立つ
・ストレスがあった方が、学習や成長に役立つ
・ストレスには良い効果があるため、利用すべきだ
「はい」はいくつありましたか?
前半の質問は「ストレスは害になる」というもの。
後半の質問は「ストレスは役に立つ」というもの。
あとでそれがどういう効果をもたらすのか解説します。
どちらの「はい」が多かったでしょう?
あなたのタイプがどちらなのか、覚えておいてくださいね。
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③ストレスを避けると何が起こるのか?
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ストレスを受けた時、体内で様々な反応が起こります。
その時に作用するホルモンのうち以下の二つの働きの違いが重要です。
・コルチゾール
・デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)
両方ともストレスを受けた時に副腎から分泌されます。
両方とも重要な役割を担うのですが、以下のような違いがあります。
【一時的な作用】
コルチゾール:
糖代謝、脂質代謝(体と脳がエネルギーを使いやすい形にする)
DHEA:
脳の成長促進、傷の治癒を促進、免疫機能を高める
【長期的には…】
コルチゾールの割合が高いと…
免疫機能の低下、うつ病の症状
DHEAの割合が高いと…
不安症、うつ病、心臓病、神経変性などのリスク低下
短期的には両方必要な作用をもたらします。
コルチゾールの作用を見てみると、ストレスはパフォーマンスを高めるということが分かります。
長期的な作用を見ると、コルチゾールは望ましくなく、DHEAは望ましい作用です。
コルチゾールだとうつ病になり、DHEAだとうつ病リスクが低下する、という逆の作用というのが興味深いですね。
ここで、ストレスに対するマインドセット介入という問題があります。
「ストレスは害になる」と捉えていると本当にそれが実現してしまうし(コルチゾールの割合が高まる)、
「ストレスは役に立つ」と捉えていると本当にそれが実現してしまう(DHEAの割合が高まる)。
実は「DHEA」は「闘争・逃走反応」ではなく、「チャレンジ反応(後述)」によって分泌されます。
なので、
「ストレスは害になる」と捉えていると、「ストレスを避ける」という行動や「ストレスを避けたい」という気持ちによって、
「逃げる=闘争・逃走反応」に終始することになり、常にコルチゾールの作用が優位になります。
結果、うつ病になる、という訳です。
「ストレスは害になる」と考えていると…
・ストレスに向き合おうとせず、ストレスの原因についてなるべく考えないようにする
・ストレスの原因に対処しようとせず、ストレスを紛らわそうとする
・ストレスを紛らわすために、酒や買い物やギャンブルや恋愛などに逃げたり、依存したりする
・ストレスの原因となっている人間関係や役割や目標に対して、努力したり、意識を向けたりするのを止める
要するに、現実逃避する。
それが、悪循環となり、
・疲労が促進され、
・自制心が低下し、
・自己破壊的な気晴らしでごまかし、
・充実感や人生に対する満足度・幸福感が著しく低下し、
・孤立してしまう。
これが、「ストレス生成の悪循環」と言われるものです。
さらに、
「ストレスを感じる自分はダメだ」と自己否定してしまうと、
自分がもっと
・頭が良ければ、
・強かったら、
・まともだったら、
こんなにストレスを感じなくてすむのに…
と自分を責めてうつ病のリスクが高まる。
一方、「ストレスは役に立つ」と考えていると…
・強いストレスを感じる出来事が起きた事実を受け止め、現実として認識する
・ストレスの原因に対処する方法をしっかりと考える
・情報やサポートやアドバイスを求める
・ストレスの原因を克服するか、取り除くか、変化を起こすための対策を講じる
・困難な状況をなるべくポジティブに考え、成長する機会として捉えることで、その状況において最善を尽くそうと努力する
要するに、地に足をつけて対策を講じることができる。
「あらゆる点において快適で安全な暮らしなど、あるはずもない」と現実を見据え、ストレスは成長するためのチャンスだと捉えることができる。
これが「心の頑健さ」と言われるもので、ストレスによって成長する勇気(=行動する活力)を与えてくれる考え方です。
このように、マインドセットは、自分の経験をどのように受け止め、どのような決断を下すかに大きく影響を及ぼしています。
マインドセットは、過去の思いがけない状況や誰かの言葉などがきっかけとなって、強化されがちで、健康や幸福や寿命といった長期的な結果にも影響します。
過去のストレス体験によって
「ストレスは悪いものだ。避けなければ」
と感じたこともあったでしょう。
また、
「ストレスを乗り越えると成長できる。怖がる必要はない」
と感じたこともあったでしょう。
これからでも遅くはありません。
過去のストレスの体験(=トラウマ)に対するとらえ方(=マインドセット)を変えることによって、人生を好転することも可能となってくるのです。
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④ストレスはあなたの大切なものを教えてくれる
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ストレスのない人生は幸せだと思いますか?
つまり、これまでの人生を振り返って、ストレスのあった出来事を全て取り除いたら理想の人生になるでしょうか?
・あなたが成長するきっかけとなった経験
・最も心に残っている出来事
・誇りに思っているチャレンジ
・大きな影響を与えた人間関係
そこには、必ずストレスがあったはずです。
ストレスを避けるのではなく「そこにどんな意味があるのか」という観点でとらえてみましょう。
過去のトラウマも同様です。
トラウマとは、過去のストレス体験の記憶です。
そこに意味を見出せないから心の傷となって残っています。
でも、これからでも遅くありません。
トラウマのせいにして努力しないことを正当化するのか、
それとも、そこに意味を見出してこれからの人生の糧にするのかどうか、
あなたは選択することが可能です。
「闘争・逃走反応」は脅威に対する反応です。
つまり、「自分にとって大切なものが脅かされたときに生じるもの」です。
あなたにとってどうでも良いことにはストレスを感じません。
自分自身のストレスを理解することは、自分自身の大切なものを理解するということです。
ぜひ、ストレスを避けるばかりではなく、そこに向き合うということにもチャレンジしていただきたいです。
あなたは、なぜ、ストレスを感じたのでしょう?
あなたのどんな大事なものが脅かされたのでしょう?
その大事なものは、あなたの大切な価値観かもしれません。
「○○すべき」という執着かもしれません。
もしかしたら、その考えに執着しているから、他の人とぶつかるのかもしれません。
自分の正しさに執着するのではなく、多様な価値観を受け入れることが、楽に生きることにつながるかもしれません。
これは一例ですが、このように、自分に問いかけてみてください。
不快かもしれませんが、そこに意識を向けなければ、同じようなストレスにさいなまれ続けることになります。
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⑤PTSDからPTSGへのシフト
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闘争・逃走反応についてはすでに述べましたが、他にもストレス反応はあります。
同じような、戦争・災害・事故・事件・肉親の死、などのストレス体験を経てトラウマ(心的外傷)を負っても、
心的外傷後ストレス障害(PTSD)になってしまう人と、
心的外傷後ストレス成長(PTSG)をもたらす人がいます。
つまり、大きなストレスによって、
生きづらくなる人もいれば、
それによって成長を遂げる人もいるということです。
その違いは、ストレス反応の違いです。
主なストレス反応は以下の三つです。
闘争・逃走反応:
・身の危険を感じた時に素早く行動を起こすための反応
・アドレナリン・コルチゾール分泌
・交感神経活性化
・五感が研ぎ澄まされる
・心拍数増、呼吸早く、筋肉緊張
・消化機能等の緊急的ではない機能は低下・停止
つまり、その場を生き延びるための、火事場の馬鹿力が「闘争・逃走反応」です。
チャレンジ反応:
・ストレスはあっても危険が無い場合
・アドレナリンは分泌されるが、DHEAの割合高くなる
・自信が強まり、
・集中力が高まり、
・進んで行動を起こし、
・最高のパフォーマンスを発揮し、
・経験から学ぼうとする
つまり、ストレス下でパフォーマンスを最大限に高めるのが「チャレンジ反応」です。
思いやり・絆反応:
・オキシトシン分泌
・勇気が強まり
・進んで人の世話をし、
・社会的な関係を強化
・心臓細胞の再生や微小損傷の修復を促進
つまり、ストレスがかかる災害時などで助け合って生き残ろうとするのが「思いやり・絆反応」です。
さらに、ストレスによって脳が成長します。
なので、ストレスを避け続けるということは、成長の機会を逃していることになります。
ストレス反応の後、脳は数時間かけて神経細胞間の結合を「再配線」します。
ストレスの経験を記憶し、そこから学ぼうとするのです。
脳が情報を処理している間は、そのことを何度も想起したり、気分が落ち着かなかったり、恐怖やショックや怒りを感じたり、罪悪感や悲しみに襲われることもあります。
また、安心感や喜びや感謝の念を覚えることもあります。
体と脳はストレスを伴う経験から学びます。
そうやって、「ストレス免疫」を高めます。
そして、次に同様のストレスを感じた時に上手く対処できるようになるのです。
「ストレスは悪」として
目を逸らしたり避けようとしたりすると、「闘争・逃走反応」に終始し、学びも少なくなり、時にトラウマ(PTSD)となってしまいます。
ストレスから学ぶことがあると思っていると、
「チャレンジ反応」や「思いやり・絆反応」に切り替わり、ストレス免疫の効果も高まり、経験からの学びも増えていきます(PTSG)。
「ストレスに強くなる」というのは、
ストレスを感じなくなるとかストレスを解消するとかストレスを避けるとかいうことではありません。
ストレスを感じた時に、
「勇気」や「人とのつながり」や「成長」という人間ならではの底力を自分の中に呼び覚ますことです。
ストレスを経験する中で、自分自身を積極的に変えていくことなのです。
ストレスは避けるべきものではなく、うまく利用すべきものです。
困難な問題を避けたり否定したりせずに、正面から向き合えば、ストレスの多い経験に対処する能力を培うことができます。
人生の試練を乗り越える自信もついてきます。
困った時には相談し、助け合う仲間もできます。
自分でどうにかできる問題には、手遅れになる前にしっかりと対処できるようになり、どうにもできない状況は成長するための機会として受け止められるようになります。
過去のストレス体験は止むを得なかったものです。その時にはそうするしかなかったのです。
しかし、それを嘆いたりしても現実は良くなりません。
ストレス体験を捉え直すことで、それを成長の糧として、未来を良い方向に変えていくことは可能なのです。
過去のストレス体験がトラウマとなって、生きづらさにつながっている人もいらっしゃいます。
それを捉え直し、「闘争・逃走反応」を「チャレンジ反応」又は「思いやり・絆反応」に変えましょう。
その時は、
・恐怖で何もできなかった、
・逃げるしかなかった、
・避けることしかできなかった、
・我慢してやり過ごすことしかできなかった…
でも、今振り返ってみると、その体験に意味を見出すことができるはず。
我々は過去に囚われて、なすすべなく不幸になってしまうような無力な存在ではない。
意志を持って望む未来を選択できる。
勇気を持って人生を切り開きましょう。
とはいえ、ここまで読んで「お前に何が分かる。ふざけるな!」と思う人もいらっしゃるかもしれません。
それでも、そんなあなたにも「幸せになる力がある」ということをお伝えしたいです。
今はそう思えないかもしれませんが、あなたの心には、自分で自分を癒す愛の力があり、前に進むための勇気があるのです。
長く、読みづらい文章を読んでくださいまして、ありがとうございます。
ここまで読んでくださった方、素晴らしいと思います。
あなたが今、何か悩みを抱えておられるのなら、誰かや何かのせいにし続けるのを止めて、自分と向き合ってそれを解決するための第一歩を踏み出しました。
ぜひぜひ、豊かで満ち足りた、自由で自分らしい人生に向け進んでいっていただけたら、と思います。
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